●講師:大屋定晴(北海学園大学経済学部教授)
私は現在、大学の講義で『資本論』を教えつつ、ハーヴェイの著作も翻訳してきました。ハーヴェイも長らく『資本論』を教えてきた人です。彼の公開オンライン講義「『資本論』を読む」の内容をまとめたものが課題テキストになります。これを手掛かりに『資本論』の現代的意義を改めて考えてみましょう。

●講義の進め方
初回オリエンテーションの後、一回に付き一章を読み進めていきます。毎回1-2名の方に概要をまとめていただき、発表いただきます。その後講師からの解説と質疑応答・ディスカッションを行います。
●プログラム
6/22 オリエンテーション/自己紹介
自己紹介、オリエンテーションを行います。
7/13 序章「『資本論』をどう読むべきか」
マルクスの知的背景、研究構想、研究方法を確認しつつ、『資本論』を読む意義とその読み方を考える。
(解説対象:『資本論』第1巻各版序文)
8/3 第1章「商品と価値」
資本主義的生産様式の富の基本形態である商品の分析から、それが存在しうる社会的必要条件を解明する。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第1-2章)
9/28 第2章「貨幣とその諸機能」
商品交換における貨幣の二重の機能を捉え、その矛盾に信用貨幣と恐慌の可能性を読み解く。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第3章)
10/12 第3章「資本の生成と労働力商品」
商品市場という自由で平等な世界で、いかにして剰余価値の搾取が起きるのか。その矛盾を分析する。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第4章)
10/26 第4章「労働過程の弁証法と剰余価値生産」
労働過程の内部へと視点を転換し、その資本主義的形態としての剰余価値生産を考察する。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第5-7章)
11/9 第5章「労働日と階級闘争の政治学」
資本主義的生産様式のもとでの時間と時間性を理論化しつつ、その階級闘争の必然性を理解する。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第8-9章)
11/16 第6章「相対的剰余価値の生産と階級戦略」
相対的剰余価値生産への転換を論じ、相対的剰余価値生産の諸方法を把握する。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第10-12章)
11/30 第7章「機械と大工業?―技術と諸契機の弁証法」
史的唯物論再考の手掛かりと工場制度の労働者への影響とを検討する。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第13章第1-3節)
12/14 第8章「機械と大工業?―機械と階級闘争のダイナミズム」
技術的進化を通じて露わとなる資本主義の諸側面を分析する。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第13章第4-10節)
2022/1/11 第9章「剰余価値論から資本蓄積論へ」
ミクロ的分析からマクロ的分析へと転換し、資本の蓄積過程を二つの視角から捉える。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第14-22章)
1/25 第10章「資本主義的蓄積と貧困」
自由主義的ユートピアを脱構築し、資本蓄積が労働者階級に与える負の社会的影響を明らかにする。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第23章)
2/8 第11章「本源的蓄積と『略奪による蓄積』」
賃労働の歴史的起源に迫るとともに、現代における「略奪による蓄積」の蔓延に注目する。
(解説対象:『資本論』第1巻日本語版第24-25章)
2/22 終章「省察と予測―資本主義の諸矛盾と恐慌」
『資本論』第2巻・第3巻への議論の展開の手がかりを理解するとともに、現代資本主義社会の危機傾向との関連を考察する。