8/25 『表現の不自由展・その後』展中止をめぐり何が起きたのか
アライ=ヒロユキ/岡本有佳
表現の不自由展はそもそも何を目指し、なぜたった3日で中止決定が発表されたのか、その後、「限定再開」されるまで何が起きたのか。検閲された展示空間という現場そのものに触れるメディアがほぼない中で、展示空間を作った当事者の眼から語ります。
●主著:アライ=ヒロユキ『検閲という空気 自由を奪うNG社会』社会評論社 2018/岡本有佳・金富子共編著『〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか』世織書房 2016
●参考文献:岡本有佳・アライ=ヒロユキ編『あいちトリエンナーレ「展示中止」事件─表現の不自由と日本』岩波書店 2019 /安 世鴻・李春煕・岡本有佳共編著『誰が〈表現の自由〉を殺すのか─ニコンサロン「慰安婦」写真展中止事件裁判の記録』御茶の水書房 2017
9/8 「表現の不自由展中止事件」はどう報じられたか
これまでも、国家権力の意志と社会の空気を背景に「検閲」は繰り返されてきた。そんな日本社会に突きつけられたのが表現の不自由展の中止だ。責任の一端を担うメディアの一員として、事件をどう見たか振り返る。
●共著:神奈川新聞「時代の正体」取材班『時代の正体 vol.1─権力はかくも暴走する』現代思潮新社 2015/神奈川新聞「時代の正体」取材班『時代の正体 vol.3─忘却に抗い、語りつづける』現代思潮新社 2019

9/18(金) 〈平和の少女像〉と表現の自由ー「慰安婦」問題と歴史修正主義
なぜ〈平和の少女像〉は検閲の核心にされたのか。「慰安婦」問題をめぐる現代日本の歴史修正主義を抜きには語れない。講義ではその背景と構造を探っていきたい。
●主著:『植民地遊廓─日本の軍隊と朝鮮半島(』共著)吉川弘文館 2018/ 『継続する植民地主義とジェンダー:「国民」概念・女性の身体・記憶と責任』 世織書房2013
●参考文献:金富子「表現の自由と『慰安婦』問題」『誰が〈表現の自由〉を殺すのか─ニコンサロン「慰安婦」写真展中止事件裁判の記録』 御茶の水書房 2017/金富子・板垣竜太編著『増補版 Q&A 朝鮮人「慰安婦」と植民地支配責任 (Fight for Justice ブックレット )』御茶の水書房 2018

10/6 アートを社会の中に活かすとは
近年欧米では、アートや芸術が人間の健康や高齢化に与える影響やインパクトについての研究が盛んであり、医療やケアの現場にアートが導入されています。急激に高齢化する社会においてアートが果たす役割について考えます。
●主著:『進化するアートマネジメント』 レイライン2004 / 『進化するアートコミュニケーション─ヘルスケアの現場に介入するアーティストたち』 (共著)レイライン 2006
●参考文献:『アートリップ入門』誠文堂新光社 2020(予定)

10/21(水) イベントのリスクとは何か。市民はどう対応できるのか
『表現の不自由展・その後』展の中止以後、さまざまな市民集会やイベントが「安全性」を理由に中止や内容の見直しを迫られています。いくつかの経験を紹介しながらリスクをどう管理し集会やイベントを守るかという議論を皆さんと深めていきたいと思います。
●参考文献:安 世鴻・李春煕・岡本有佳共編著『誰が〈表現の自由〉を殺すのか─ニコンサロン「慰安婦」写真展中止事件裁判の記録』御茶の水書房 2017

11/4(水) 歴史修正主義に市民社会はどう向きあうか―日本とドイツの比較から
Sven Saaler(スヴェン・ サーラ)(上智大学国際教養学部 教授/フリードリヒ・エーベルト財団東京事務所 日本代表)
近年、ドイツでも過去の侵略や虐殺を否定・相対化させる右派の言説・勢力が台頭しています。また移民排斥も大きな社会問題となっています。その背景と市民社会の対抗策、表現・言論空間との関係をお話いただきます。
●主著:『Politics, Memory and Public Opinion―The History Textbook Controversy and Japanese Society』Iudicium 2005/『Pan-Asianism in Modern Japanese History―Colonialism, Regionalism and Borders』(共著)Routledge 2006
●参考文献:長谷川雄一、吉次公介、スヴェン・サーラ共編著『危機の時代と「知」の挑戦(下)』論創社 2018/ スヴェン・サーラ 「東アジアと欧州における『戦後70年』」『季刊 戦争責任研究』日本の戦争責任資料センター編 2016
11/17 表現の自由と法律家の役割―裁判、仮処分による権利実現は可能か
表現活動に権力が介入するとき、一個人である表現者がこれに対抗して立ち上がることができるでしょうか?ニコンサロン事件とあいトリ事件を題材に、裁判所を通じた権利実現の可能性を考えます。
●共著:『誰が〈表現の自由〉を殺すのか─ニコンサロン「慰安婦」写真展中止事件裁判の記録』御茶の水書房 2017/『《自粛社会》をのりこえる─「慰安婦」写真展中止事件と「表現の自由」』岩波ブックレット 2017
●参考文献:瀬木比呂志『絶望の裁判所』講談社現代新書 2014

12/1 見守る朝鮮学校美術教育とアート、見守れない日本社会
朝鮮学校の美術教育は生徒の自主性、今表現できることを今やることを大事にします。美術部の SNS が炎上し、生徒が真摯にかつアートな対応をする中、自分と向き合い、出した答えは。
●共著:『Document YAKINIKU─アーティスト・アクションin枝川』Artist Action 2013

12/14(月) 表現の自由と規制の相克ー憲法から考える争点
表現は、人に喜び、怒り、悲しみ、楽しみをもたらします。しかし、表現によって怒りや悲しみが作り出されたとしても、そのことだけでその表現を奪い去ることはできません。表現の自由の意義について考えていきます。
●主著:『《自粛社会》をのりこえる─「慰安婦」写真展中止事件と「表現の自由」(』共著)岩波ブックレット 2017/『ビッグデータの支配とプライバシー危機』集英社新書 2017
●参考文献:岡本有佳・アライ=ヒロユキ編『あいちトリエンナーレ「展示中止」事件─表現の不自由と日本』岩波書店 2019/『「表現の不自由展・その後」に関する調査報告書』あいちトリエンナーレのあり方検討委員会 2019年12月18日

1/12 市民社会スペースとしての公共的文化・ 集会施設の現状と可能性
9条俳句事件をはじめ、公民館などで頻発する表現、集会の自由侵害の現状を検討し、それらを市民社会スペースとして再生させる可能性を国際比較も交えて考える。
●参考文献:佐藤一子・安藤聡彦・長澤誠次編著『九条俳句訴訟と公民館の自由』エイデル研究所 2018/谷和明「『特定の政党の利害に関する事業』 解釈の二重基準と公民館の政治的中立性」『日本公民館学会年報』第15巻 日本公民館学会 2018

1/26 おわりに―世界の不自由と抵抗
アライ=ヒロユキ/岡本有佳
検閲や規制など、言論表現への抑圧は日本だけでなく、世界中で見られます。一方、その抵抗運動や政治的対抗表現も、韓国を代表例に多くの国で起こっています。 日本の現状を変えるには何が必要か、模索します。
●主著:アライ=ヒロユキ『天皇アート論─その美、"天"に通ず』社会評論社 2014/安世鴻・李春熙・岡本有佳共編著『《自粛社会》をのりこえる─「慰安婦」写真展中止事件と「表現の自由」』岩波ブックレット 2017
●参考文献:岡本有佳、アライ=ヒロユキ編『あいちトリエンナーレ「展示中止」事件─表現の不自由と日本』岩波書店 2019/アライ=ヒロユキ『検閲という空気 自由を奪うNG社会』社会評論社 2018